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hirschkalb's blog

"I beseech you, in the bowels of Christ, think it possible that you may be mistaken."

こころの病が軽快しているのに復職ができない方へのメモ

ソフトウェア開発の現場から

ITエンジニアのメンタルヘルスについて、状況はあまり好ましくないようです。


特に、休職からの復職が難しくなっているとのことです。しかし、もしあなたが、以下の記事の引用箇所と同様の理由で復職を拒否されているならば、復職できる可能性は大いにあります。理は、復帰を望む社員側にあります。

さらに、こころの病による休職からの復職も、難しくなっている。不況のため、こころの病で仕事の効率が悪くなっている人を受け入れる余裕が、企業側になくなっているからだ。

 約1年間の休職からやっと復職できる状態に病状が改善してきた人が、復職判定の場で上司から「いま戻っても仕事がないから、もう少し休んでいてくれ」と言われてしまった---というケースが、IT業界では現実に起きている。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20100427/347569/?ST=slfhlt

会社にどのように伝えるかは別の問題として、まずは会社側の論理のおかしさを確認していきましょう。

前提1: 「完全に治癒したら復職」「通院の必要がなくなったら復職」はありえない

いわゆる「こころの病」の治療は、以下のようなステップを踏まれるものと思います。

  1. 心療内科・クリニック等を受診する。医師から休職の診断を出される。
  2. 会社にその旨を伝える。仕事の引継ぎを行いながら休職の準備をする。
  3. 休職。通院しながら自宅療養する。
  4. 医師から復職可能の診断が出される。(「完全治癒」の診断ではないことに注意)
  5. 会社にその旨を伝える。社内での判定があり、可となれば、
  6. 復職。通院しながら様子をみる。
  7. 完全治癒。


ここで強調しておきたいことは、「完全治癒 (ならば)⇒ 復職する」という論理は成り立たないことです。


「そもそも完全治癒とは何か」という問題も興味深いところですが、ここでは簡単のため、「もはや通院が必要ないレベルまで回復した状態」をそのように呼ぶことにしましょう。


さて、あなたがその「通院が必要ないレベル」に達しているかどうかは、あなたが実際に仕事をしてみるまで、判定のしようがありません。治療の目的は「会社で働ける状態になること」であったはずと思います。したがって、「実際に会社で働いてみる」という行為は、必須とならざるを得ません。


以上のことを換言すると、「治癒したかどうかは復職後に判明する」ということです。よって、会社側の「治癒したら復職できる」という論理はどうしても成り立たないことがわかります。また、「通院の必要がなくなったなら復職できる」という主張についても同様に論駁できます。


このことを会社が受け入れられないとするならば、それは「『こころの病』にかかったものは二度と職場に復帰できない」といっているのと同じことです。

前提2: 「仕事がないから休み続けてほしい」というのは会社の都合

「いま戻ってきても仕事がないからもう少し休んでいてほしい」という会社の主張をよく確認しましょう。いわば肉をそぎ落として骨だけにしてみるのです。そうすると、次のような話であることが分かります。

会社は、あなたに会社を休んでほしいと言っている。

ここにはもはや、あなたが「こころの病」を抱えている事実や、休職中であることは、まったく関係のないことであることに注意しましょう。一見すると「仕事がないからもう少し(継続して)休んでほしい」という流れには論理的帰結があるかのように見えますが、そうではありません。


これまであなたが休んでいたのは療養のためです。一方で、ここから先の休暇(そうです。ここから先は「療養」ではなく、単なる「休暇」です)は「会社のお願い」であることに注意したいと思います。


医師から復帰可能の診断が出ていることは、あなたが、働ける人かという判断において、ほかの従業員と同じ土俵にいることを意味しています。そうすると、なぜあなただけに会社が休暇の取得を頼んでくるのでしょうか。


もっと簡単に考えるには、次のことを想像してください。つまり、あなたが普通に職場で働いていたとして、ある日突然、会社が(ほかの社員もいる中でなぜか)あなただけに「仕事が少ないから休んでほしい」と頼んでくるだろうかと。


「こころの病」にかかったことが負い目で、もしかするとその対象に選ばれるかもしれないと思われるかもしれません。しかし、今回たまたま「こころの病」にかかったのだと考えてください。いわば事故にあったようなものです。会社が誰かを休ませなければならないとして、たとえば自動車事故にあって骨折した人を、骨折していたことを理由に休暇させたならば、これは問題となることでしょう。


ところで、本当に会社の仕事がない状態ならば、それは会社の問題であって、あなたの問題ではありません*1。それは会社を経営する側に責任がある話です。


したがって、会社の仕事がないという理由で社員を休ませるということならば、そのときは、社員の「有給休暇」が使われるのではなく(あるいは当然のことながらあなたの「病欠」などでもなく!)、「一時帰休」が行われるべきです。このことで、無駄に有給が使われることもなく、平均賃金の60%以上の手当が保障されます。

一時帰休
【ヨミ】イチジキキュウ

企業が、不況による業績悪化などの理由で操業短縮を行うにあたり、労働者を在籍のまま一時的に休業させることを「一時帰休」といいます。労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」にあたるため、休業期間中、使用者は労働者に対して、平均賃金の60%以上の手当(休業手当)を保障しなければなりません。
(2009/4/27掲載)

http://jinjibu.jp/GuestDctnr/dtl/225/

会社への切り出し方

さて、以上から理はまったくあなたの方にあることがわかりました。問題は、この話をどのように会社に話すかにあります。


することが望ましくないという話からすると、あなたのほうからいきなり帰休の話を出すのは好ましくありません。もともとあなたは復帰したかったはずなのですから、復帰に向けた話をすることが望ましいでしょう。賃金や有給休暇の残日数から話を切り出すのは、あまりよい戦略とは思えません。


また、仕事の受注ができないのは会社に責任があるとしても、そのことを直接は述べないほうがよいでしょう。単に「会社の仕事の受注状況」と、「あなたがこころの病を患ったこと」は、独立した別の事象であることを述べるにとどめましょう。


することが望ましいという話をすると、会社とのやり取りは何かしら記録が残る形で行うことをおすすめします。会社からは一方的に、社外での面会による口頭での対応(つまり記録に残らない形式での対応)となることも予想されます。しかし、こちらからはメールで連絡したり、面会時はメモをとったり(これは相手に誠実な対応を求めるようプレッシャーをかけることにもなります)、会社からの電話は録音しておく*2ことが、後々あなたの助けになるでしょう。


そして最後に、「会社とは対立しているのではなく、あくまで双方にとって納得のいく結果を求めて対話しているのだ」という前向きな気持ちをもって事に当たることが好ましいということを述べておきます。ご健闘をお祈りいたします。
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*1:あなたが危惧するに値することではあるかもしれません。しかし、あなたが原因で仕事を受注できないのではありません。

*2:録音機器がないときは、会社からの電話を少し遅れて取る(録音の準備をしている可能性を示唆)・こちらからかけなおす・「先ほどの話を確認しますが」というフレーズを使う・まるで記録しているかのようにいつもよりはっきりと話すという行為によって、会社に録音の可能性を疑わせることができます。また同時に、相手に対して誠実に対応するよう、無言のうちに要求することができます。

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