hirschkalb's blog

"I beseech you, in the bowels of Christ, think it possible that you may be mistaken."

しゃくしゃく余裕でアナリーゼ - YUKIのJOY

どのような結論が出るのかまったく予想を立てずに書いてみます。本記事のねらいは、論理学における様相の量化を私的におさらいすることです。


ヨーソーのリョーカといって、直ちに「ああ、あれのことね!」とはなりにくいと予想しますが、とりあえずオイニーがツイキー(においがきつい)くらいの印象でも本文の理解に支障のないように書ければと思います。

「運命は必然でなく偶然でできている」?


『JOY』(YUKI、蔦谷好位置 作詞、蔦谷好位置 作曲)におよそ以下のようなニュアンスの歌詞の一節があります。

運命は必然ではなくて偶然でできている


このままでは目的の解析がしづらいため、適当に文章を換えてみます。

運命は必然で構成されているのではなくて偶然で構成されている


もう少し。上は自然言語として問題なくとも、論理的に処理するにはまだ問題を含んでいます。「偶然」も「必然」も性質をあらわす言葉であって、特定の個体ではありません。「(性質)が〜する」は、論理的には不正確な、主語の省略された文とするのが適切で、したがってここでは隠れた主語を明示することが望まれます(「(特定の個体が)(性質)をもっているならばそれは〜する」式に書き換える必要があります)。

運命は必然的に発生する物事で構成されているのではなくて偶然的に発生する物事で構成されている


あと一歩でしょうか。「AではなくてB」は、論理上「A、なのではない。かつ、B」と同じことですから、次のように書いても問題ありません。

運命は必然的に発生する物事で構成されている、のではない。かつ、運命は偶然的に発生する物事で構成されている。


おおむね準備はととのいました。念のため次のような書き方も候補に挙げておきます。

必然的に発生する物事で運命は構成されている、のではない。かつ、偶然的に発生する物事で運命は構成されている。

少しずつ論理記号に置き換える - その1


さて、上を記号による表現に換えてみます。一気に変換することは難しそうなので、少しずつ記号化してみましょう。


ひとまず次のような書き方ができます。「構成する」は「〜が〜を構成する」というように、2つの項(「〜」)を要する二項述語ですので、順に x yを変数(変項)とすると、

 \text{F}xy (読み方)  x yを構成する /  y xで構成されている


と書けます。


プログラミング言語における一般的な関数の書き方になぞらえて、次のような書き方もできるでしょう。

 \text{Construct}(x, y) (読み方)  x yを構成する /  y xで構成されている


どちらを採用してもよさそうですが、記号化することで日常言語に潜むあいまいさを軽減したいのだとすれば、無機質な前者の書き方のほうがより目的にかなっているといえます。


いずれを採用するにせよ、前半のフレーズを取れば、 xには「必然的に発生する物事」が入り、 yには「運命」が入ります。


私自身の理解のためにゆっくり進めたいので、(聡明な方にはまどろこしいかもしれませんが、)確認のためここで日常言語寄りに表現してみましょう。

 \text{Construct}(\text{certainties}, \text{destiny})


ところで「必然的に発生する物事」をざっくりと \text{certainties} とあらわしましたが、もう少し応用可能性の高い書き方に変更できないものでしょうか*1


たとえばこのような記述はどうでしょう。……。


(私の脳みそがここで行き止まり)

少しずつ論理記号に置き換える - その2


書いているうちに何がなんだかよくわからなくなってしまいました。別のアプローチを試みたいと思います。「運命は必然的に発生する物事で構成されている」──この文の記号化をもう一度試みます。


ここで、試みに「運命」を次のように解釈します。すなわち、運命は人生における数々のイベントの集合であるとみなすのです。数々の、と書きましたが、論理的な処理を加える際には「some 少なくとも」か「every すべての」に落とし込んである必要があります。さしあたり「every すべての」で進めてみます。


イベント xが命題 \text{P}を満たすもので構成されている、ということを \text{R}(x, \text{P})と書くことにしましょう*2。この文について、次のような記号化が可能です。

 \forall x \exists y \text{R}(x, y=\text{certain})


逐語的に読むとこうなります。「すべてのイベント \forall x(=運命)について、次のことが成り立つ。すなわち、そのイベント xは、あるきっかけ \exists y──それは必ず起こるのだが =\text{certain}──によって構成されている」。


はたしてこれでよいでしょうか。慎重にみると、この命題には少し問題がありそうです。いろいろとありうるきっかけのうちどれが「あるきっかけ y」なのかわかっていなければ、この命題は成り立ちません( yを特定できていなければなりません)。


よって、このような読みのほうがよさそうです。

 \forall x \text{R}(x, \exists y(y=\text{certain}))


この命題の逐語訳はこうです。「すべてのイベント x(=運命)について、次のことが成り立つ。すなわち、そのイベント xは必ず起こるあるきっかけ \exists y(y=\text{certain})によって構成されている」。


さて、ここでひとつの疑問が浮かびます。「イベント」と「きっかけ」は、意味上いったい何が違うのでしょうか。きっかけだって、ある種のイベントに違いありません。一方で、あるイベントだって次なるイベントのきっかけに違いありません。


つまり、これまで x yをあたかも違うもののように表現してきましたが、実のところ次のように表現していたに過ぎないのではないでしょうか。

 \forall x \text{R}(x, \exists x(x=\text{certain}))


ダメ押しで逐語訳するとこうなります。「すべてのイベントについて、次のことが成り立つ。すなわち、そのイベントは、必ずそのイベントによって構成されている」。あまり意味のある命題に見えません。はて……。


(私の脳みそがここでふたたび行き止まり)

クールダウン


しゃくしゃく余裕どころではありません。論理記号を使った文(命題)への変換をしくじり続けています。問題は歌詞を上手に解析できていないことにあるのでしょう。件の歌詞はそのままでは論理的の操作を与えづらい形をしていることは確かですが、では自然言語レベルでどのように変換したらよいものか。当初の予想に反して、意外と困っています。

  • 人生で起こるすべてのイベントは必然である……?
  • あらゆる物事がイベントならばそれは必然的に起こる……?
  • 運命は必然のイベントで構成されている……?


いったい「運命は必然でできていない」とは、そして、「運命は偶然でできている」とは、どういったことなのでしょうか。


なんだか、はまらなくてよいトラップにはまっているような感触があるので、いったん頭を冷やし、後日パート2としてやり直すことにいたします。どうもしまりがなくていけません。

*1:もともと本記事には「様相の量化のおさらい」という目的がありましたので、実を言えば、多少強引にでも様相や量化をあらわす記号を用いなくちゃならん、という要請があるのです。

*2:前節の関数[tex: \text{F}(x, y)]や[tex: \text{Construct}(x, y)]とは異なる関数です。

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