hirschkalb's blog

"I beseech you, in the bowels of Christ, think it possible that you may be mistaken."

電子か紙か両方か - the excluded third


日本における電子書籍元年とやらがいつのことであったかは忘れてしまいましたけれど、ともかく、日本の電子書籍に関する話題をつまみ食いしていると電子化遅々として進まずの感を強めたくなるのもさもありなん、と思ってしまいます。


その原因の一つには「『誤った二分法』による議論」があるのかなという思いがちらっと脳裏をかすめたので、その思いをメモとして書き残しておこうと思います。

誤った二分法(あやまったにぶんほう、英: false dichotomy)あるいは誤ったジレンマ(英: false dilemma)は非論理的誤謬の一種であり、実際には他にも選択肢があるのに、二つの選択肢だけしか考慮しない状況を指す。


(ref. Wikipedia 「誤った二分法」)


要するに、私の当座の疑問というのは「なぜ『紙か電子か』の議論になるのだろうか。『紙電子』ではいけないのだろうか」というものです。


さらにいうと、「なぜ『書籍』でなければいけないのだろうか」とも思っています*1

いくつかの意見

インターネットの発達に伴い、新聞や雑誌などが一斉に電子化される一方で、紙媒体に携わってきた書き手や編集者なら「紙へのこだわり」は捨てきれないもの。


(ref. “最後の無頼派”伊集院静が語る「電子書籍と紙媒体の行方」)

61 :*****
ジャンプがamazonからダウソ販売されたら買うけど、紙のマンガ雑誌が
なくなってコンビニに置かれなくなると大打撃だろうな。


62 :*****
漫画は電子化でおKだが
後は(゚?゚)イラネ
活字は本で読みたい


114 :*****
紙は邪魔だけど疲れにくいからなあ


150 :*****
電子書籍とか
持ってる気がしないんだよね
流石にやめてほしい


283 :*****
電気がないと読めない本なんかいらんわ


307 :*****
活版印刷とか時代遅れだよw
ペーパーメディアwww


341 :*****
電子書籍にすれば中古本という概念が無くなるのか


415 :*****
電子書籍とか目がつかれすぎ
目が疲れなくてペラペラ曲がる有機ディバイス商品化してからごちゃごちゃ言え


421 :*****
電子書籍なんて日本じゃ普及しないだろ
オタ層なんか間違いなく現物をとる


663 :*****
本はやっぱり紙がいいよ。
電子書籍じゃ読んだ内容が頭に入らない。
いつでもどこでも買えるのはいいけど、
本屋で何読もうかなとフロアーを練り歩く楽しみもある。


861 :*****
中古で安く技術書買えなくなるのか・・・


24. Posted by 2011年10月29日 18:42
ラノベを電子化はなんか嫌だ

紙ならどれ持ってって電車で読むか迷う楽しみあるのに電子化は味気ない


40. Posted by 2011年10月29日 18:47
本屋で立ち読みしながらどれ買うか迷うのも楽しいんだよ

電子化はなんかされたら立ち読みで掘り出し物を探す楽しみもなくなるだろ

何でも電子化すりゃいいってもんじゃない


59. Posted by   2011年10月29日 18:50
停電したら読めない本はいらんなあ


69. Posted by 吹雪 2011年10月29日 18:52
いや〜! ヤメテー、俺パソコン持ってない


273. Posted by   2011年10月29日 19:42
いちいち気を使う電子書籍なんていらんな
だいたいどれくらいの人が使ってるんだろ

劣化させず保存目的レベルならまだしも


277. Posted by   2011年10月29日 19:43
小説つかライトノベルくらいなら電子書籍でパッパと読みたいけど学術書をマジマジと液晶なんかで見たくないな。


(ref. http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1673159.html)

二番目の引用元は、実は利便性云々の話題ではなくてアマゾンによる日本の出版社への要求に関する話題なので、ここで引用するのは少々お門違いかもわかりませんが、とりあえず「紙さもなくば電子」系の混乱をきたしているように見受けられる例として引いてみました。


どうも、電子化すなわち紙の否定、というわかりやすい対立を描出したがる雰囲気が感じ取られてしまうのです。


そうはいっても、万年筆が出た頃は毛筆の人が、ボールペンが出た頃は万年筆の人が、ワープロが出た頃はペンの人がそうであったように、常に新たな技術に対して慣れ親しんだものを守る思いがまさるあまり、穏当を欠いた新技術への批判を行うことはどの時代でも散見されるものなのかもしれません。


何かを守りたいならば単純にそれを守れば良いのであって、新たなものの参入を目の敵に攻撃しても、望ましい結果は得難くなるだけのように感じています。

だいたい書籍である必要すらないのでは


「紙の書籍だー!」「電子の書籍だー!」「わー!」とつばぜり合いをしているところを銃で狙うかのような意見かもしれませんが*2、だいたいが「書籍」である必要は何なのか、という意見があります。


「書籍」という言い方は明らかに紙の文化を引きずっています。頭に「電子」を付けないと真意が伝わらない電子書籍は、一見紙の書籍と対立しているかの様相を見せていますが、起源は確かに紙の書籍にあります。


ここで素朴な疑問がわきます。「あれ、なんで書籍でないといけないの? わざわざデジタルにしたのに?」


初期の飛行機械は鳥の羽の動きの真似から始まったそうです。次第に鳥には存在しないプロペラによる動力を経て、現代の飛行機の形になっていきました。


これと似たような進化(あるい進歩?)が現在の電子書籍にも望まれます。いまはまだ紙の書籍の模倣段階です。ウェブページすら印刷物の時代を引きずっているデザインがまだ残っています(一例として、フォントサイズをユーザが変更できないようにしている、ユニバーサルデザインのユの字のかけらもないデザインなど)。


鳥に似ていて明らかに鳥とは違う動力を持つ飛行機のように、書籍に似ていて明らかに書籍とは違うユーザビリティを持つ、書籍とは違う何か、がきっと未来にはできている、といいなと思いましたとさ。

iTunes StoreとCDとの関係とは異なる


ところで、この種の議論のなかで流通しがちと思われる話題として「CD販売とiTunes [Music] Storeの関係」があります。


「iT[M]Sの登場による音楽業界の[創造的]破壊」などと良くも悪くもいわれるものです。


しかし、この関係を紙の書籍と電子書籍との関係との比較に使うのは難しいだろうと考えています。


というのも、iTSが登場した頃に「やっぱり音楽というものはiTSでダウンロードしてiPodで聴くよりも、CDで聴くほうが味があっていい」といったレガシーシステムを支持するような主張はほとんどなかったろうと思われるからです。


iTS(およびそれに類するサービス)よりも「CDショップに行って、CDを買い、家に帰ってプレーヤに入れ、然る後に聴く」ほうが総合的に優れているとか、風情があるとか、もののあわれを感じるとか、そういったことはあまりないわけです。


一方で、紙の書籍には人によって程度に差があるものの、紙とインクのもたらす落ち着いた雰囲気とか、捨てがたい味(重みとか感触とかにおいとか)、風味・表情を感じさせるものが色々とあり、これを電子書籍をもって再現するのは困難でしょう。


したがって、紙の書籍の人々に対する深い魅力を信じているような人であるならば、それゆえにこそ、ことさらに書籍の電子化を拒む理由はないはずだと思うのです。*3


ん? 「したがって、」以降がぜんぜんタイトルと関係のない結論になってしまいました。まあ、メモなんで、メモ。*4

*1:たとえばこの記事は読み物として書いたつもりですが、本ではないわけです。こういった形態もあるわけです。もっとも、本になるような内容でもありませんが。

*2:よくわかんない。

*3:とは書いてみたものの、実のところ、紙の書籍は超高級品になるか、嗜好品と似たようなものになるか、あるいは現代におけるレコードの立ち位置に近いものになる可能性が高いのではなかろうかと想像しています。

*4:ちなみに私は紙の本が大好きで、かつ、電子書籍にとても魅力を感じています。

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