hirschkalb's blog

"I beseech you, in the bowels of Christ, think it possible that you may be mistaken."

グルメ番組のコメントについて

昨年末に視聴した『アイアンシェフ』での長野博氏のコメントが際立っていました。同様の感想を持ったひともあるようです(http://togetter.com/li/419197)。いったい何がそう思わせたのでしょう。
 

長野氏のコメント 

P「おも湯のまったりした感がいいですね。スープと一緒に食べられますね」
 
Q「鶏のカリカリしたのが──北京ダックもそうじゃないですか、巻いて食べる──ああいう感もありますし、レバーのペーストがコクがあるんですけど、紫蘇の葉でさわやかにもっていってくれているのが、ものすごく食べやすくなりますね。これ紫蘇が入っていないともう少し重く感じると思うんですけど、この一枚でぜんぜん変わりますね」
 
R「海苔で海と山のものが一緒になっている感じですよね。それだけだとさわやかで終わっちゃうんですけど、カラスミをかけることで印象に──舌にすごく残りますね、旨味という」
 
S「いろんな効果が相まって、ひとつになっているんですね」
 
T「泡が意外に口の中にちゃんと残りながら消えていくんですよね」
 
長野氏のコメントはおおよそ上記のようなものでした。これらを少し分析的に見て行きたいと思います。良いコメントのコツをつかめるかもしれません。
 

確認し共感する(P, Q, R, S, T) 

なぜ長野氏のコメントは他のコメントより際立つのか。それは、単純に他のコメントがそれほどでもないからだという意見もあるでしょうが、私は、長野氏がシェフに語りかけていることがポイントではないかと考えます。PからTをみてもわかるように、「確認と共感」がなされています。試みに各コメントの文末に「シェフはそういう意図でお作りになったのですよね、私はそこが好きです」(確認と共感)という一文を付け加えてみても、依然コメントとして成り立つことがそれを示しています。
 

視聴者がわかりにくいところを言い(P, Q, T)、「で?」に応える(P, Q, R)

ところで、この番組は「料理の鉄人」なのですから、視聴者は食べたあとの最終結論が「おいしい」ことなのは先刻承知です。加えて、見た目が綺麗なのも画面を見ればよくわかります。あるいはさほど綺麗ではないならばそれも見ればわかります。要するに、以下の様なコメントはあまり望まれません。
 
視聴者が予めわかること・見ればわかること;
「うまい!」
「やっぱり違いますねぇ」
「絶妙な味ですね」
「ボリューミー」
「こんなんうまいに決まってますやん」
「好きー!!」
「きれー」
 
その点、長野氏のコメントは視聴者が画面越しに得た情報だけでは述べられないことをコメントしています。
 
視聴者が見ただけではあまりわからないこと;
p おも湯がまったりしていること
q1 鶏がカリカリしていること
q2 紫蘇の葉一枚でがらっと印象が変わること
t 泡が見た目よりもしっかりしていて口の中に残ること
 
 
さらに、そのコメントは「それがどうしたのか(So what?)」という疑問にも応えるようになっています。構図は「A'(具体例)──だから──A(結論)」というようになっています。
 
A'(具体例)が提示されそれによるA(結論)も述べられている;
p'「おも湯がまったりしている──だから──スープと絡み、一緒に味わえる」
q'「紫蘇の葉がレバーのコクを中立化している──だから──重さが軽減され、食べやすくなる」
r'1「海苔が海と山のものを結びつけている──だから──さわやか」
r'2「さわやかなものにカラスミをかけている──だから──旨味という印象が舌にすごく残る」
 
視聴者が画面を見ただけではわかりにくいことを伝えたら、「それがどうしたのか(So what?)」という点も伝えることが効果的だと考えます。その点、以下の様なコメントは「で?」という思いを誘います。
 
A'(具体例)だけで終わるもの;
「うまみが凝縮されている」
「やわらかーい」
「麺がシコシコ」
「肉汁がすごい」
「味がしっかりしている」
「とろける」
「{優しい|上品な}味」
「(お野菜を食べて)すごく甘ーい」
「(お菓子を食べて)甘過ぎなーい」
 
A'(具体例)もA(結論)も通り越してZ(Aを受けての結論)に飛躍しているもの;
「好き!」
「おかわりしたい!」
「ご飯何杯でもいける」
「宝石箱のようだ」
「{ガッツリ食べたい男性が|健康に気遣う女性が|お子様が}喜びそう」
「今まで食べた中で一番うまい」
「お肌がぷるっぷる(になる)」
「飽きが来ない」
「{軽く|ガッツリ}食べたいときにおすすめ」
 

まとめ 

まとめると、「シェフの意図を確認しそれに共感し、加えて視聴者が見ただけでは想像しづらいポイントをあげ、さらにそのポイントがどのような効果をもたらすのかを説明する」と、印象に残るコメントになるのだろうと考えます。なかなかむずかしい作業です。
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